インターネットあっちこっち

おじさんが、水族館や動物園に行ったり、そのへんでお酒を飲むブログです

梅まつりににぎわう偕楽園で陰陽のコントラストを見てきた

ひょんなことで茨城県に用務が出来たのでついでに足を伸ばしてきました、早春の偕楽園。今年*1は3月上旬が一番の梅の見頃のようです。そのちょっと前の週末の様子をば。

観梅というよりはお花見の雰囲気の偕楽園


梅祭りの期間中の特定日に上り線のみ停車する臨時駅、偕楽園駅で下車。水戸駅からバスや歩きでのアプローチでも無理はないようなんですが、臨時駅という響きに惹かれこちらを利用しました。
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駅を降りるとすぐ側が、徳川光圀徳川斉昭を祀る常磐神社。
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彼ら藩侯がその隆盛に尽力した「水戸学」というものが明治維新の原動の一つとなり、また、御三家でありながら勤王を志すという立場でありながら、思想形成が早かったゆえに天狗党という早熟の暴発を引き起こして藩論が分裂、幕末期の歴史の流れに藩として関与できなかったという非常に複雑な背景があるわけですが、ともあれ、参拝客は引きも切らず……。その境内を西に向かって歩くと偕楽園の東門に着きます。
https://www.instagram.com/p/BQ9cEUQlrAV/
梅アイスと偕楽園東門。東門周辺には売店や茶屋などが何軒か並んでおりまして、梅アイスもその一軒の人気商品。もうこの辺は完全に花より団子といった雰囲気に満ちています。
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梅の様子をちょっと見たその先、千波湖偕楽園の拡張部である丸山周辺の梅林を見下ろせる芝生のエリアでは
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みなさんこんな感じで、いささか春めいてきた日差しを浴びつつ完全にくつろぎの場となっておりました。園内には県内の名産品とか農産品、及びそれを活かしたお弁当などの売店が何軒も出ていてそれを買ってこんなふうにくつろぐのもひとつの楽しみ方っぽかったです。
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芝生だけじゃなくて柵にもみなさんが。
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高台でもひときわ南側に突き出した=仙奕台(せんえきだい)より、仙波湖と田鶴鳴梅林。なんでもかつてはここで碁や将棋が楽しまれたとか。
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徳川斉昭公自ら設計の「好文亭」。古建築好きとしては入ってみたかったのですが、まあ写真の通りの人出なので、別の時期を選ぶのが賢明だろうと思ってパスしました……。
ここから梅林エリアに足を踏み入れていきます。

梅の他にも華がある

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梅を見つつ、香りを楽しみつつ、写真を取りつつ歩いていると何やら人だかりが。その真ん中にいたのは
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華やかな着物を着た「梅大使」の方々でした*2
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写真を撮らせていただいて歩きさり、ハッと思って振り返って後ろ姿を確かめると、帯も素敵な梅の意匠。

ちょっと早かった、白梅薫る梅林

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だいたいこの日の梅林の雰囲気が出ているのがこの写真で、全体的な盛りというにはちょっとだけ早く、やや白梅のほうが目立つ状況。
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紅梅はきれいに咲いているものもあれば
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「遅咲き」と幹につけられたプレートに書いてあるものだと完全に蕾のままだったり。
この日一番美しく咲いていて観覧客の多くが足を止めていたのは「月影」という品種の若木でした。
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青みがかった冴え冴えとした花の色がとても美しく、どうにかその良さを写真に収めたかったのですが、僕ではこれが精一杯……。

幹の風格、古い梅の木

園内、まっすぐに伸びる梅の木ばかりではなくて、長い年月を経て、あちらこちらに曲がったりしている梅の木、自力ではその形を支えきれなくなった梅の木などもありました。その形もまた、なかなかにユニークです。
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アーチ状になった梅の木。
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樹勢は衰えず花もなかなか艶やか。
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軍艦のダメージコントロールを思い起こさせる支木。
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六名木の一つ「白難波」もだいぶ補助が必要な感じになっていました。
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年月を経て熱帯雨林の「絞め殺しの木」のように幹の真ん中が空いてしまった梅。これでも立派な花を咲かせているんだからすごいものですね。

「陰」の気を感じる、本当の入り口

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梅園の端、偕楽園の西のはじにあるこのシックな黒門が本来の表門。
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門の奥にある「一の木戸」をくぐれば、そこには昼なおくらいモウソウチクとスギの林が広がっています。
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これは「陰」の世界を表しており、ここを抜けると高台と梅園からなる「陽」の世界たどり着く、というのが偕楽園の本来の造築意図であった、というのは黒門の脇にあった解説板による説明でした。
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ゲームのセーブポイントか中ボス出現ポイントに見えますが、これは大理石による「吐玉泉」という……という……噴水、でいいのかなこれ。背後の崖に湧く水を枡に貯め吐き出させているものです。この水は好文亭での茶会で利用されていたほか、眼病に効くという伝承があるそうです。
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手前は次郎杉と呼ばれた杉の巨木の名残。吐玉泉の周りにはかつて太郎杉〜五郎杉までの五本の杉の巨木が立ち並んでいたそうですが今は奥に見える太郎杉が残るのみ。

ことごとく斜め、線路沿いの風景

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吐玉泉から少しだけ下った池のある開けたエリア。日照が良いのか紅梅がきれいです。
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なにやら地面をあさるトラツグミの姿。
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斜面に枝を伸ばす梅と、正岡子規がこの景色を見て詠んだ「崖急に 梅ことごとく 斜めなり」 という俳句の句碑。梅園の素直に植えられた梅と、眼前の千波湖の広さの間に斜めに生える梅の木には確かに何か胸を打つものがありました。
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偕楽園駅にアプローチする常磐線をバックに一枚。
この週末は梅酒祭りなども催されるそうです。皆様の行楽の候補地にいかが。

琵琶湖を知る、滋賀県を知る、滋賀県立琵琶湖博物館 (その2)水族館編

すっかり間が空いてしまったのですが、
hms-ulysses.hatenablog.com
の後編、琵琶湖博物館の水族館パートの探訪記です。

ヨシ原、光さす大水槽

琵琶湖博物館では「水族展示」のエリアで琵琶湖の生き物の展示とともに、同じように古代湖であるバイカル湖アフリカ大地溝帯の湖の生き物を展示しています。そのエリアに足を踏み入れるとまず出迎えてくれるのが琵琶湖の沿岸部を模したヨシ原の大水槽。
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館内の大水槽と館外に植えられたヨシが見事に琵琶湖の湖岸を模しています。
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深場をゆうゆうと泳ぐコイやワタカ、ヨシの根本にひっそりと群れるタモロコやタナゴなどの小魚。きっと琵琶湖の浜の先にひっそりと潜ったらこんなだろうという景色が展開されています。午後の日差しが暖かく差し込んでいて、素晴らしい光景でした。最も、ここ入口の人気コーナーなので、粘らないとこんな無人ぽい写真は撮れず



と言った感じで賑やかでした。
先に進んでいくと琵琶湖が深度を増していきます。
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琵琶湖の岩場から沖合にすむ魚たちを展示するトンネル水槽。中ではギンブナやイワトコナマズが元気よく泳ぎ回っています。
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珍しい、アルビノのイワトコナマズも。

でてこいビワコオオナマズ

そしていよいよに琵琶湖の最深部、琵琶湖の主ともいえるビワコオオナマズを展示する水槽です!ビワコオオナマズ琵琶湖博物館のほかは埼玉県のさいたま水族館でしか飼育されておらず*1、しかも事故によって本館休業中*2さいたま水族館では実質的に見ることが出来ないため、ここでしか見れないと言っていい超レアな存在。なんですがー
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水槽の中心の穴場にひっそりひっそりといらっしゃいました。なお、水槽の後ろ側にまわると


https://www.instagram.com/p/BMdZFMoDLUI/
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ここから、コアユのトルネード水槽*3を抜けると、ビワコに住む個々の生物を紹介する水槽のコーナーに移っていきます。

琵琶湖の個性的な面々

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田舟の浮かぶヨシ原の下には
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かわいい顔したウキゴリなどが展示されています。
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ビワヒガイ、だったと思う。
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仲良く土管ハウス住まいのナマズ達。ナマズは琵琶湖の湖面と周囲の田んぼを行き来する特徴的な生態を持つ生き物として紹介されていました。
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えいえいっと泳ぐアカミミガメ。この水槽はオオクチバスコクチバスも混泳している「外来種」水槽。彼らもまた琵琶湖に生きる生き物たちであるというのが難しいところ……。
ちなみにこの「琵琶湖のさまざまな生き物」の最後に琵琶湖の魚介類を扱っている魚屋のレプリカがあったんですが、


https://www.instagram.com/p/BMddf_vjl2o/
厳しい状況だ……。
あと、特に固有種ということではないのですが、琵琶湖やその他に生息しているギンブナは基本的にメスだけで無性生殖し、他の魚の精子をかけても特に受精せずギンブナの稚魚が生まれてくるそうです。ギンブナ……、薄い本かよ……。

流れ込む川の生き物たち

展示は更に切り替わり、琵琶湖に流れ込む川の生き物が姿を表します。
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かなり強い川の流れを再現した水槽、オイカワなんかが泳いでいました。
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川の上流部。真ん中の樹の下にオオサンショウウオが隠れているのが分かるでしょうか?
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魚だけでなくカイツブリやカモも展示されていました。
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琵琶湖の生き物だけではなく淡水に住むさまざまな希少種の保護や繁殖も行われています。こちらは沖縄に生息するタナゴモドキとアオハラヨシノボリ。
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保護増殖センターの様子がちらっと見えます。

世界の古代湖の魚

ついには日本を離れ、琵琶湖と同じような「古代湖」に済む生き物たちの展示へ。古代湖というのは10万年以上前から存在する湖のことで、その長い歴史によって多様な生態系は育まれていることが多いのです。
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バイカル湖のカジカ、ペスチャナーヤ・シロコロブカ(左)とバイカリスカーヤ・ボリシェゴロヴァーヤ・シロコロブカ。名前がめっちゃ長い。
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模様から一瞬ヤマメの仲間に見えますが、こちらは「ゴリヤン」というコイ科の魚。
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バイカルアザラシは全然ガラス面に近づいてきてくれませんでした……。
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タンガーニカ湖のシクリッド達。


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こちらはヴィクトリア湖水産業のために導入され色々と議論と問題を読んでいるナイル・パーチ。そういえば「ナイルパーチ」という甘ロリ系のブランドがあるらしく、画像検索をすると釣果を求める男たちの画像と甘ロリの服が混淆していて脳がグニグニします。なんでそんな名前にしたんや。
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展示水槽の掉尾を飾るのは古代魚チョウザメ達。そのデカさにこの写真の男児だけでなく多くのちびっこたちが惹きつけられていたのをみることができました。ただ、ここだけ開放水槽で、通りががった社会科見学っぽ女子中学生の集団が「え、な、なんか生臭くない??」と言っていたのもまた印象的でした。実際濃厚な魚臭がする。

ふれあい水槽は水槽内に負圧をかけることで、水槽の横から手を突っ込めるようにした面白い仕掛け。パスカルの原理ってやつなのかな。最初どうなっているかわからなくて、解説員の方に質問してしまいました。

プランクトンを紹介するコーナー。オタクなのでナウシカだ!!って思いました。

おまけ


https://www.instagram.com/p/BMdeovwDlA-/


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琵琶湖そのものと、琵琶湖に住む生き物、そして暮らしの中の琵琶湖を五感で感じることができる一日いて飽きない博物館でした。素晴らしかった!

*1:JAZA加盟園では

*2:2017年2月現在

*3:これ、海水魚のいる水族館だったらイワシでやられてるやつですね

琵琶湖を知る、滋賀県を知る、滋賀県立琵琶湖博物館 (その1)博物館編

友人の慶事にあわせて京都を訪問し、
hms-ulysses.hatenablog.com
hms-ulysses.hatenablog.com
と2ヶ所、個人的に行きたかったスポットに行ったのですが、その第三弾、滋賀県立琵琶湖博物館の訪問記です。
早起きできてうまく時間を使えれば琵琶湖博物館京都水族館のはしごできるかなーって思ってたんですが、慶事の後に止めてもらった別の友人の家ですっかりよく寝てしまって


となった次第です。バスとJRを乗り継いで昼過ぎに到着。
https://www.instagram.com/p/BMdGl7RjgJd/

館内のセンターホールから広く琵琶湖が見えるようになっています。
https://www.instagram.com/p/BMdLDmkjxDe/

滋賀県の動く湖、琵琶湖


さて琵琶湖と言いますとすごい古い時代から存在する「世界でも有数の古代湖」と呼ばれる湖なわけですけれども、別にすごい古い時代から滋賀県の真ん中にあったわけじゃないんだよーと教えてくれるのが最初のA展示室「琵琶湖のおいたち」です。
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琵琶湖周辺の地層の切り出し。ハチャメチャに折れ曲がっている地層が地殻変動の激しさを物語っています。
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地殻変動の結果、現在の滋賀県三重県の県境付近にできた「大山田湖」が現在の琵琶湖の祖先であり、そこにはこの写真のような牙と顔の長い古代ゾウ「ステゴドン」などが生息していたようです。そして引き続く地殻変動とともに湖だった時期と低湿地だった時期を交互に繰り返しつつ、段々と北上していっておよそ40万年前に現在の琵琶湖が成り立ったとのことで、なんともスケールの大きな話だ……。
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琵琶湖を誕生させた地殻変動は、大陸から日本列島を切り離すこととなり、大陸と日本列島で段々と淡水魚の系統も異なっていくことになります。しかし、琵琶湖には大陸と同系統のコイ科クルター類「ワタカ」が生き残っていて、固有生物の多い琵琶湖の生態系の一端が示されます。地形の変化が遺存者のように固有種を残していたわけで、でかいから固有種がいるってことだけじゃないんですね。
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こちらは「琵琶湖の研究室」を概念的に示したコーナー。魚の骨格や標本、地層や化石などが展示され、現在どのようにそれぞれの研究が行われているのかざっくりと示してくれます。顕微鏡とかのぞけて、お子様にも大人気でした。

昔からめっちゃ利用されていた琵琶湖

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B展示室は「人と琵琶湖の歴史」がテーマ。固定の遺跡・異物を調査する方法の紹介から始まります。方法っつうか、壁で水域を囲んで中の水を抜きます、みたいな豪快なやつなんですが……。
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貝塚の展示も、発掘現場を模しつつ奥に背景置いて、なんといいますか「広がり」をイメージさせようとしているのがいいですね。
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江戸時代の産品や水運品目の紹介。
別に室町時代の沿岸の港の様子なども展示されているんですが、「やっぱ京都近いと古くから高度に利用されんだなー」というのが南関東人としての素直な感想です。
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展示室の真ん中にドーンと置かれている琵琶湖の水運船「丸子船」とその横は漁船「ハリブネ」(左)。
丸子船は和船の構造材である両舷の「おも木」に巨木を2つに割ったものを使用しているのが特徴だそう。江戸時代中期には1000隻を有に超える丸子船が活動していたものの、東・西回り航路の整備によって少しづつ勢力を減らし始め、明治期以降の鉄道の整備により姿を消していくことになります。*1
ここで展示されている丸子船はかつての姿を残そうと、ベテランの船大工さんが製作したものだそうです。
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ちなみに、博物館の屋上デッキから見た極めて現代的な琵琶湖利用(?)。

いま、琵琶湖とともに生きるということ

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C展示室のテーマは「湖のいまと私たち」。湖岸のアシ原/カヤ原に住む生き物の展示から始まります。こちらは巣の中で丸まっているカヤネズミ。


https://www.instagram.com/p/BMdPcDLDa6l/
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田んぼの圃場整備が生き物に与える影響とそれを低減させる取り組みについての展示です。
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田んぼの生き物としてダルマガエル(だったと思う……)なども展示されていました。
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琵琶湖に流れ込む川もまた琵琶湖に大きな影響を与えるということで、源流部の生き物の剥製、林業や治水の様子なども展示されていました。単に湖水面だけが琵琶湖じゃないというのはよく考えられて主張であり展示だと思います。
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さて打って変わって雑誌やポスターと日用品や家電製品が並ぶこのコーナー、何かといいますと現代とから段々と過去の時代へと遡っていく言わばタイムトンネル。この先には……
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昭和39年の彦根市にあった民家に行き着きます。
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ガス台普及前のカマド。「カミクド」とも呼ばれているのは興味深いですね。「おクドさん」だと京都の呼び方なんだけど、この地方独自の呼び方なんだろうか……。
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もちろん単に古民家だということで展示されているわけではありません。オモヤと別にカワヤと呼ばれる建物があり、そこでは水路から引き込んだ水を食器や食材の洗い物に使っていました。右の枡形の部分がカミナガシとシモナガシと言われる洗い場。この一番下手にはコイが飼われていて流れてきた食べ残しなどを食べていたとのこと。水とともにあった暮らしを保存して展示しているコーナーなのでした。

「琵琶湖を知る、滋賀県を知る、滋賀県立琵琶湖博物館 (その2)水族館編」に続く予定です

動物が近い!よく動く!改装なった京都市動物園

さて、前回の記事で
hms-ulysses.hatenablog.com
疎水博物館や水路閣をスルーと書いたのですがこれは実は京都市動物園に行くためでした。
https://www.instagram.com/p/BMaJQgHDq6X/
京都市動物園は2009年からの動物園リニューアル事業*1が2015年度に完了し、2016年は言わばお披露目の年。報道やインターネットでの評判も良く、早いタイミングで一度行っておきたかったのです。

朝イチの動物園のいまいちエンジンがかかっていない動物たち

ということで、琵琶湖疎水散歩の後、開園前に入口に到着。動物園や水族館の開場を時間前から待つの、人生で数度目の出来事です。
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朝イチなのでアジアゾウも全然放飼場に出ておらず、背景のうっすら色づいた京都の山並みとも相まって妙に雰囲気のある絵みたい。
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他のゾウたちは飼育舎でドアの開放待ちみたいでした。多くの飼育員さんが声を掛け合ってゾウの世話をしている様子には若干のピリッとした感じがあり、「ゾウは賢く,接し方次第で人によく馴れる動物ですが,反面,係員との接触事故などが最も多い動物」と紹介されるだけのことはあります。*2
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客が少ないのでリラックスしてエサの魚をついばむタンチョウ。しかし、どこの動物園でも思いますが、水鳥の給餌のために死んだ魚が撒かれている光景はシュール。
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朝日を浴びて体温を上げているワオキツネザルたち。このやる気0感!
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ニシアフリカコガタワニも、
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インドオオコウモリもダラッとしていましたが、まあ彼らはたぶん昼も夕方もこんなかな……
ちなみにこのワニやコウモリが展示されているのは「ひかり・みず・みどりの熱帯動物館」という施設。大きくはないながらも展示スペースに工夫があって、ワニの手前にある水場も単に水浴びのためだけのものでなく、魚類*3が飼育されていて、本来の生息状況のイメージを喚起するようになっています。
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見えにくいんですが、グリーンイグアナの背びれ(?)の奥、木の下で丸まっているのはフタユビナマケモノ。両種とも南米のジャングルに住んでいるので同居は納得です。でも、ナマケモノちょっとくつろぎ過ぎかも。

「せいかい」連発のチンパンジー

日本で霊長類の研究と言いますと京都大学というイメージがありますが、同じ京都ということで京都市動物園では単に霊長類を飼育するだけでなく、認知科学的な研究を京大と共同で行っているということです。
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チンパンジー舎の一角にコンピューターやらカメラやらが接続されたシステムが幾つか配置されていて、チンパンジーの行動を飼育員さんが記録しています。
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こちらはタッチパネルに表示される1から20までの数字を小さい方から順にタッチしていくと「正解」判定となりエサが出てくるシステムで餌を出しまくっていたチンパンジーです。
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外の放飼場の様子。
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陽の光がうまく入るように設計されたニシゴリラの飼育舎。
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ゴリラの家族たちは3頭揃って枝をガジガジしてました。
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アカゲザルたちが社会性をこじらせているのも研究でどうにかしてあげてほしい……

目と鼻の先でくつろぐライオンとバリバリと鶏を食べるトラ

さて「もうじゅうワールド」と名付けられた一角に足を運びますと、何かを舐めたり噛んだりしているクロヒョウがいます。
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完全に昼寝モードのライオンのメス。なんでもここはヒーターが仕込んであって温かいスポットとのこと。
運良くトラの給餌展示も見ることができました。
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飼育員さんが丸の鶏や馬肉の切れ端をトラがいないケージに置いていきます。
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飼育員さんの退出後ケージ間を仕切る扉が開かれトラがやってきます。
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まず馬肉の切れ端をぺろり。
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そしてバリバリむしゃむしゃと鶏を……。
全体的に飼育舎は狭目なんですが、逆に言うと猛獣たちが直ぐ側で見れるということでもあって、これらの写真をでかい望遠レンズをつけずに撮ることができました。
あと「もうじゅう」ワールドなんですがツシマヤマネコの飼育舎もあって
かわいかった。

キリンを見上げる/見下ろす

さてうって変わって広々としているのがキリンやシマウマなどがいる「アフリカの草原」の放飼場。
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こちら、右手奥に見えるようなデッキがぐるりとめぐらしてあって
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背の高いキリンをこんな風に見下ろすことができます!しかし、仕切り網とか複数頭のキリンが重なり合っている状態だとキリンの模様もかなり迷彩効果がありそうに見えますね……。
高さと言えばレッサーパンダ舎にも工夫があって、放飼場に背の高い木が植えてありそこにレッサーパンダが登れるようになってるんです。
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こんな感じ。え、全見えない?

これで分かりますかね……。
キリンの放飼場のまわりには
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およそ生きているようには見えないプレリードッグや
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幼獣がかわいいヤブイヌなどがいました。

京都の生き物たち

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最後は京都の里山をイメージした「京都の森」ゾーン。
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雨で増水した鴨川で発見されたまに話題になるオオサンショウウオ
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希少種のイチモンジタナゴ。琵琶湖ではあまり見られなくなってしまった本種が琵琶湖疏水から水を引いている平安神宮の池に生息している*4という縁で、保護・繁殖に取り組んでいるそうです。
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なんだかしょんぼりしている感じのキツネ。
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京都市街地でタヌキをみると『有頂天家族』を思い出しますね。ひょっとしてこの2頭も時々化けてどっか出歩いてるんじゃなかろうか……。

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

こういう地元にいるが普通の生活をしていると出会うことのできない動物の展示は動物園の重要な役割だと思います。

標本・剥製のある「展示室」や図書館カフェものぞいてみたかったのですが、昼からの友人の披露宴に出席するためここで時間切れ。


ケーブルに引かれて船、山を登る。蹴上インクライン。

友人の慶事に呼んでいただいた勢いで、一度行ってみたかった京都は琵琶湖疏水の蹴上インクラインを見てきました。蹴上インクラインとは琵琶湖の水を京都市街地に通す琵琶湖疏水に付帯する施設で、琵琶湖で水運に従事する船が疎水を利用して京都に入れるよう、アップダウンがあるところを台車に乗せて通すようにしたものです。
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蹴上駅からほど近いところに位置する「ねじりまんぽ」と言われるトンネル。上をインクラインが通っています。インクラインを通る重い船にも耐えられるよう、トンネル内部のレンガが捻れているように積まれているの、わかりますかね……。
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トンネルをくぐって遊歩道を登りだすと見える琵琶湖疏水を利用する発電所の導水抗。今でもこの発電所から京都市内に電力が供給されています。
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こちらはやはり琵琶湖疏水の水を利用する蹴上浄水場浄水場の施設まで周囲に溶け込むように作られているの京都っぽすぎる。
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よくわからないけどこの辺も発電所関係の施設っぽい。最後の写真はたぶんダムの余水吐に当たる施設だと思います。

往時を忍ばせる樽を積んだ船も

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かつての蹴上船溜まりに再現された水運船。この船溜まりと蹴上の間の峠部とその後の長い急な下りを安全に下るため、琵琶湖疏水をやってきた船は台車に積まれ、発電所の電力で動くケーブルを使ってここを乗り越えていったのでした。
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消失点写真。
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ぐぐっと下っていくとインクラインと歩道がほとんど高さが同じになっている地点があり、そこには清酒樽を積んだ船が再現展示されていました。大津方面への「下り」だけど坂を登る方向。
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京都市動物園から見る南禅寺船溜付近。このほとりに琵琶湖疏水資料館があったのですが、この日は動物園を堪能するためスルーしたのでした。動物園に関してはまた後日!