アクアマリンふくしまの「大人の宿泊ナイトツアー」に参加してきたーその1(まずは1人で回った)
2015年の晩秋、水族館アクアマリンふくしまが募集していた「大人の宿泊ナイトツアー」に応募したところ、幸運にも当選できたため、これに参加するべく福島県いわき市のアクアマリンふくしまに足を運びました。いやー水族館主催のナイトツアー、どこも大人気と聞いていたので絶対当たらないだろうと思っていたんですがどういう星のめぐり合わせだったんだろう……。当日は興奮しすぎたのとツアーの前にまず自分の足で水族館一巡りしておこうと朝一の常磐線の特急に乗り込んで泉駅へ。運転免許持ってますし、長距離運転も別に苦手ではないのですが、旅に出るときはいつでも飲酒できる構えを大事にしたいので公共交通機関の優先度が高くなります。駅前から、多分乗ってた特急と接続をとっているっぽいバスに乗り込み、あとから地図を見返すと全然そんなことないんですが
全然地名になじみのない土地で本数のめちゃくちゃ少ないバスに乗ってるの緊張感ある
— えいちえむえす・ゆりしーず (@hms_ulysses) 2015, 11月 21
とかなんとか言っているうちに到着。
まず1人で全体を見て回わりました。
アクアマリンふくしま @ Aquamarine Fukushima https://t.co/bBJrRJh6YW
— えいちえむえす・ゆりしーず (@hms_ulysses) 2015, 11月 21
アクアマリンふくしま周辺の小名浜港地区、様々な工事が行われていて、東日本大震災の津波による直接的なダメージから復旧し、さらなる復興を目指しているように見えました。
さて水族館のエントランスゲートを通過してまず広がっているのは2015年の夏にオープンした「わくわく里山・縄文の里」エリア。水の中にいるという淡水魚以外、特に何か飼育されている動物がいるわけではないのですが、先史時代のいわき市エリアの植物相の再現を試み、水族館には珍しく広義の「歴史」をイメージさせるエリアです。所々にある説明板には濃厚に照葉樹林文化論が感じられる。アクアマリンふくしまが単に多くの動物をコレクションした施設を目指しているわけではないのがここだけでもわかります。そしてそのわかりやすい象徴がかつてのニホンカワウソのいわば「代わりに」展示されている「自然豊か」と仮託された情景の中で飼育されるユーラシアカワウソです。
こんな風な沢のイメージの飼育舎。大量の淡水魚が陽を浴びて輝いてます。巣のカワウソもかわいい。
そして本館の建物へ。
自然光をたくさん取り込んだ館内、受付から順路通りに進んでいくとまず生命の発生を説明するディスプレイたち、そしてそこからの進化を示す古生物の化石や模型が出迎えてくれます。
天井からぶら下がるいわゆるディニクチス/ダンクルオステウスの模型。一緒のタイミングに入館した男児がこれに怯えておばあちゃんにしがみつくの見た。
ウミサソリの化石やヌタウナギ、オウムガイ、チョウザメ、ガーやポリプテルス、ハイギョ、サンショウウオなどの「生きた化石」が展示されています。
ここからグーッと長いエスカレーターを上がっていくと自然光の差し込む「ふくしまの川と沿岸ゾーン」へ。
川の上流から湧水や汽水域までを展示するオーソドックスなスタイルですが差し込んでくる光がとてもきれいです。
そして汽水域水槽の目の前には、アクアマリンふくしまの目玉とも言える大水槽「潮目の海」が広がっています。
「ふくしまの川と沿岸ゾーン」から最初に見える「潮目の海」は暖流側なので温かいところで暮らす魚たちが目に入ります。
これ、最初一人で見てまわったときはスペースの都合での配置かなと思ったんですけれども、後のツアーで飼育員さんに教えていただいて福島の川が海に流れこむことをイメージしてるんだというのに気が付きました。
陽光を受けて輝きながら泳ぐシイラ @ Aquamarine Fukushima https://t.co/LPCzTyxUSt
— えいちえむえす・ゆりしーず (@hms_ulysses) 2015, 11月 21
そしてシイラその他を警戒して水面近くにイワシがイワシ玉を作っている
イワシ玉のアップ
この水槽の大きさ!そしてそこの魚たちの動き!素晴らしいの一言なんですけれども僕の写真ではうまく伝えられなくてもどかしい……。
この先、寒流の水槽を横目に(後に触れます)先に進むと「北の海の海獣・水鳥」ゾーンへ。
僕が行った時は水鳥は展示されていなかったんですがそれはおいていおいても
トドのこのデカさよ。 @ Aquamarine Fukushima https://t.co/7qjrBuD5H8
— えいちえむえす・ゆりしーず (@hms_ulysses) 2015, 11月 21
ゴマフアザラシもクラカケアザラシ*1悠々としたものです。しかし、クラカケアザラシ、種全体で模様があんなだって言うから驚くよな。
さらに歩を進めると「オセアニックガレリア」という展示コーナー(魚と人の産業上の関わり、地元の河川や地質の説明などを展示する)。
われわれの食卓と魚の関係や地元の川で採取されたサケの受精卵なども展示されています。
ここからは再び自然光の差しこむ「熱帯アジアの水辺」そして「サンゴ礁の海」へ。
この水槽、まるでCGアートのように不思議な動きを見せるキンメモドキと、底砂から顔を出してゆらめくチンアナゴの姿がとても魅力的で、口開けたままかなり長い時間見惚れていました。
ここで再び順路は、「潮目の海」の大水槽の前に戻ってきます。
こちら側から見るとキハダマグロやカツオの姿もしっかり見えますね。
感の良い方はもうお気づきになったんじゃないかと思うんですが、「熱帯アジアの水辺」から「サンゴ礁の海」を経て、福島沖の「潮目の海」に至るというの、黒潮の流れてくる経路が象徴されてるんですね。
さて、ここで突如として水族館の、しかも展示順路内には大変珍しい施設が目に入ります。
寿司処。そうです、スシです。アクアマリンふくしま、上記オセアニックガレリアのところでもチラと書きましたが、単に水棲生物をコレクションするだけの水族館ではなく、人と水棲生物の関わりに非常に意識的、意欲的な水族館で、水槽の生きた魚を見ながらお寿司(というか多分「生の魚」というところに意味があるんだと思う)を食べて、いろいろ考えて欲しいということのようです。*2
ネタになる魚も資源量の多い、「持続可能性」の高い種類のものばかり。「なるべく持続可能性の高い魚を選んで食べよう」というアピールはアメリカのモントレーベイ水族館もやってますね。アンドロイドやiOSのアプリもあるからご存知の人もいらっしゃるのでは。*3
せっかくですのでお昼としてお寿司頂きました。おいしい魚を手頃な値段で食べれる時代が長く続くといいなあと思いながら……。
さて、福島の河川と沿岸→潮目の海、東南アジアの海辺→黒潮、と来たわけですから、次は「オホーツク海」です。
北の方の海の水棲生物は全体的にこう、なんかSFというかコズミックホラーっぽい。なお最後の写真で後ろにぼんやりと写っているのがアクアマリンふくしまでしか見られない「アバチャン」という深海魚で、ピントの合わせ方間違えましたね……。
そして再び「潮目の海」の今度は親潮側へ。
親潮は黒潮に比べて栄養塩類が豊富な豊かな海なわけですけれども、それが黒潮側の水槽と比べて生物の多様性でひと目にわかるようになっています。
「潮目の海」の親潮側と黒潮側の下設けられたトンネルを潜りぬけると
「ふくしまの海」にいわば「戻って」きます。
比較的見慣れた感じがする魚が多い。
この後、友好提携園館情報コーナーを経ると順路は別館「アクアマリンえっぐ」に続きます。
「アクアマリンえっぐ」は釣り堀とテーマ別水槽が複合された子供向け施設で。
子育てをする魚
毒のある魚
魚の共生
魚類以外のいきもの:両生類
魚類以外のいきもの:哺乳類
と言った感じにテーマにわかれた水槽や飼育ゲージがありました。
またさらには
動物園/水族館では珍しい「死」の展示。分解されつつあるウシガエルの死骸、その奥に分解されて骨だけになったウシガエルの死骸。 @ Aquamarine Fukushima https://t.co/XvZKag9AlD
— えいちえむえす・ゆりしーず (@hms_ulysses) 2015, 11月 21
なども。リアルタイムの「九相図」です。
このあとシーラカンスに関する展示があるんですが、写真撮りそこねました。シーラカンスの標本とシーラカンスロボの動きがめっちゃいい感じなので!見逃さないで!!
順路の最後は「金魚~生きた芸術~」。展示水槽にも工夫が凝らされていて、美しいの一言です。新品種桜ブリストルの作出にも挑戦中らしく、この辺りも魚と人との関わりに積極的にコミットしていく姿勢が垣間見える気がします。
1人で見て回ったところの紹介だけでめっちゃくちゃ長くなってしまった……。参加した「大人の宿泊ナイトツアー」については次のエントリで書こうと思います。よろしくお願いします。