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おじさんが、水族館や動物園に行ったり、そのへんでお酒を飲むブログです

アクアマリンふくしまの「大人の宿泊ナイトツアー」に参加してきたーその2(「大人の宿泊ナイトツアー」本編)

さて、その1の通り1人で興奮しながら水族館をめぐった後はいよいよ「大人の宿泊ナイトツアー」です。
受付を済ませると「アクアルーム2」で暫く待つように言われます。公民館とかにある会議室のような部屋です。外部向けイベントなんかで使う多目的室って感じなんでしょうね。正面にはホワイトボードがあってナイトツアーのスケジュールが書かれています。その前にはパイプ椅子が30脚くらい置かれて参加者の方々が思い思いに座っています。みなさんカップル・グループ・ソロとやはり思い思い出の参加で、ソロ参加おじさんとしてはちょっとホッとしました。なお、脇に置かれた長机にはお茶とちょっとしたお菓子がおいてあって、飲食自由とのこと、ありがたい心遣いです。
企画担当の方から最初の説明としてスケジュール・遵守事項の説明とグループ分けが発表があり、「大人の宿泊ナイトツアー」が本格的にスタート。

まずは「昼の館内見学」

ということで各グループに1人担当の方がついてそれぞれで水槽及びバックヤードの見学です。水槽自体は1人で回った時と変わらないので写真は上記その1でイメージしていただくとして、うちのグループについてくれた担当の方が飼育員の方だったためちょいちょい面白い話が聞けて良かったです。生き物の採集や購入だけじゃなくて、順路の最初で展示されている化石の買い付けもやっていて、けっこういい値段するんだとか、天皇陛下パラオ訪問された時にパラオ国際珊瑚礁センターでハゼの展示やったの友好館としてアクアマリンふくしまがアドバイスしたんだとか、この水槽の魚は以前アクアマリンふくしまのチームでパラオ行った時に採ってきたやつだとか、もうこっちは「へえぇ!」って言いっぱなし。

「このハゼはその時自分が捕まえたやつですね、世界最大級のハゼ*1
「ええっ?このでかいのハゼなんですか!?ハゼに見えない……」

バックヤードではまず駐車場で移動水族館車と

採集してきた生体を運搬するトラックを見せてもらいました。

このトラックの後部の水槽コンテナを駐車場に張り出しているクレーンで吊り上げて
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このように大水槽の上を通っているレールに下げて運び上げるんだそう。そりゃあ60cm水槽を台車で運べばいいような生体ばっかじゃないだろうしなあ。
ちなみに、駐車場を出入りするときに館長さんが通りがかられて、
担当の方「館長、ほら、今日の『ナイトツアー』に参加されてる方たちで」
館長さん「ああ、そうなんですねえ」
われわれ「ど、どーもお世話になっております」
みたいな一幕がありました。安部義孝館長、独特のオーラのある方だった。

さて、水槽間を移動中、台車で運んでいる飼育員の方がいたので呼び止めて餌を見せてもらいました。
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キビナゴとイカとエビと、後なんだったっけな、全部教えてくれたんですけどね……。振りかかっている粉は栄養剤で、栄養のバランス及び冷凍解凍の過程で失われる栄養素を補うのだそうです。
で、この餌を大水槽だとこの水槽の上に伸びてるブームの先っぽのところにたってバランスよく与えていくとのこと。


↑の何かレトロフューチャー感のある球状の物体(巡視船の赤外線捜索/光学照準指揮装置とちょっと似てる)が太陽の光を集める集光器で、集めた光を光ファイバーで導いて(水族館と関係ないですが写真中央の海外風のかっこいいタグボートは福島汽船の信濃丸)

こうやって水槽の上部で照射させている。メタハラ照明(銀の箱みたいなやつ)ガンガン光らせてても、サンゴの維持育成にはやっぱ太陽光が必要みたいです。
2時間弱かけて、しかし駆け足*2で水族館を一巡りした後は「アクアルーム2」に全員戻って次の「ハッピーオーシャンズプログラム」です。

海の恵みを考え、いただく「ハッピーオーシャンズプログラム」

「ハッピーオーシャンズプログラム」とはアクアマリンふくしまが提唱している海産物について学びながらその恵みをおいしくいただく体験プログラム。ナイトツアー以外でも旬の魚を食べる企画などが定期的に開催されているます。大水槽の前に寿司処設けるのもその一環みたいですね。まずは概論として日本の漁業全体の現状とその問題点についてスライドを使ったレクチャーを受けます。大づかみで言うと「持続可能な漁業・水産資源消費のためには適切な漁獲規制が必要なのではないか」というような感じで、インターネットだと勝川俊雄氏の同じ問題意識の記事によく注目集まっているなあと思いながら聞いていたんですが、後で調べると勝川氏、「いわきの漁業の未来を考える会」などにも参加されているので、直接的な影響もあるのかなとも思いました。

座学の後はでは実技の見学と実践をということで、まずがアクアマリンえっぐの炭火焼きコーナーに移動してアンコウの吊るし切りを見学します。ここからの「先生」は小名浜港の水産物の仲卸業者の皆さん。なお、アンコウは試験操業の対象となっていないため県外のものを仕入れたとのこと。
見る見るうちに
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「七つ道具」に捌かれていきます。
アンコウはなんでも貪欲に食べる魚なので、胃の中から何が出てくるかは開けてみるまでわからないそうで、このアンコウの胃は空っぽだったものの、人間が食べられるくらい新鮮な魚が入っていたり、話には腕時計が出てきたなんてこともあったとかなかったとか。
次はアクアルーム1に移動して
ハマチが!!
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マグロが!!
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熟練の業でさくさくと捌かれているのに見惚れつつ、自分たちも教えを受けながらいわきの地魚であるヤナギガレイやイシモチガレイのワタを抜いて一夜干しを作ったり、ほっき貝やアジなどを三枚に下ろしていきます。先生方は「いや、もう、アジ下ろすのなんて簡単ですよ」とばかりにやって見せてくれるんですが(そして僕も何度かアジを三枚におろしたことはあるんですが)
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僕はといえば



このザマです。
そして夕食、捌いてもらった and 自分たちで捌いた魚の海鮮丼、いわきの魚であるメヒカリの唐揚げ、アンコウの味噌汁、などなど、魚目いっぱいのとても美味しい夕食でした。

そしてナイトツアーへ

正直量がめちゃくちゃ多かったのと、時間がなくて急いで食べたのでめっちゃ満腹になったのですが、えっちらおっちらと図書コーナーの前に行き今度はナイトツアーの説明を受けます。

  • 順路通りに動いて後戻りはしない
  • 渡された青いフィルムの貼られたペンライト以外光を出さない
  • 注意書きのあるところではペンライトも光らせない

というような注意を受けました。特に海獣エリアは彼らをびっくりさせないように光厳禁とのこと。
そして回り始めた夜の水族館は昼に2回回った水族館と佇まいが変わっていて……
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ほぼ寝てるチョウザメ
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動きの少ない珊瑚礁の海
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キンメモドキの群れはバラバラになってチンアナゴも身を隠している(この水槽は大きな変化がストレスにならないように、照明を完全に消すことはしないのだとか)
*3
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イソギンチャクも触手を動かすことなくペタッとなっており、カニも足畳んでる。
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イセエビたちは逆に夜のほうが元気で、岩陰から身を乗り出してエサを待ってました。

大水槽前で就寝、そして朝

ナイトツアーから戻ると男女別に更衣室を振り分けられ、着替えたり、歯を磨いたりしたのち、大水槽前に寝袋を思い思いに敷いて就寝です。夜の大水槽も昼の大水槽と佇まいが違って、サンマ玉が完全にほどけちゃってました。


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そんな魚たちも朝の6時を回って太陽の光が差してくると
https://www.instagram.com/p/-XMkF7reRN/

朝、寝袋を片付けて身支度をすると今度は朝ごはんの準備です


https://www.instagram.com/p/-XQy4YreaC/


https://www.instagram.com/p/-XR0MNLecQ/
このあと鰹節削り体験をしたのですけれども僕は全然ダメで粉にしかなりませんでした(両手で必死に鰹節削っていたので写真なし)。

朝の膳。
朝ごはんを食べ、最後にアンケートを書いて「ナイトツアー」は終了。いやーすごい面白かったし、刺激になったし、お腹いっぱいにもなりました。参加させていただいたアクアマリンふくしまのみなさんには感謝の念でいっぱいです。
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朝の光が差してまだお客さんの入っていない金魚展示コーナー、すごく雰囲気が良かった。

このあと開館とともに再入場させていただいて、見逃していたクウェート・ふくしま友好記念日本庭園を見学。東日本大震災の際、クウェートから復興資金を寄せてもらったことにちなむ施設です。ここにはクウェートに関する文化・自然の展示と、

砂漠の生き物を代表してフェネックが展示されていました。


https://www.instagram.com/p/-Xj5bWLefN/

アクアマリンふくしま、水族館というのは単に珍しい生き物、人気のある生き物をコレクションする施設ではなく、水棲生物と人間に関する博物館なんだという意識的とそれを分かりやすく、美しく見せる工夫が随所に見られ、素晴らしい水族館でした。また、メンテナンスが大変なのに自然光を取り入れた水槽が多く、それを見るだけでも楽しい水族館でもあります。三連休の土・日に訪れたのですがそれほど混んでもおらず各水槽をしっかり見れたのも良かった。水族館が嫌いではなければ絶対に行ってよかったってなると思うので、皆さんにおすすめしたいと思います。

*1:ホシマダラハゼだそうです

*2:もう1時間くらいあっても良かった

*3:昼の同水槽の写真はこちら http://f.hatena.ne.jp/hms_ulysses/20151121121205