小さな聖なる丘の小さな動物園、夢見ヶ崎動物公園
そもそも「夢見ヶ崎」とは
夢見ヶ崎動物公園、身の回りの人に聞いてもあまり知名度がなくて、「そもそも夢見ヶ崎ってどこなの?」と言われがちなのですが、川崎市の南東方面の2/5あたり、具体的に言うとJR南武線鹿島田駅、横須賀線*1新川崎駅から西に少し歩いたところにあります。
新川崎駅出てすぐの新鶴見機関区をまたぐ跨線橋。昔は右の屋根付きの留置線に除雪用のラッセル車を連結したDE15形ディーゼル機関車が停められていて、そこかしこにEF64形電気機関車がいたんですが、この10年でガラッと陣容が変わりましたね……。
さて「夢見ヶ崎」という地名、なんだかニュータウン系の美称っぽい感じがしますが、実は室町時代後期の武将、太田道灌がこの地に城を築こうとした際に凶夢を見たためこれを諦めた、という伝承による地名なんだそうです。
そもそもこの夢見ヶ崎(またの名を加瀬山)、4世紀後半から7世紀後半にかけて築造された11基の古墳が残されており*2、古代の鶴見川と多摩川の流路は現在と異なっていたと思われますが、下住吉台地の終端から始まる両水系による沖積地はそれなりの農業生産力を持ち、そこを睥睨できる加瀬山が信仰ないしは権力の象徴として地域住民の注目を浴びていたであろうことは想像に難くありません。
現在でも日蓮宗のお寺(了源寺)と熊野神社、浅間神社、天照皇大神社の3つの神社が座していて、特に天照皇大神社では配祀神に白山比咩命、第六天神、石神あり、境内社に浅間神社や三峰神社があり、と東国の信仰全部盛りみたいなところありました。
ラマ舎の前の熊野神社。境内に古墳あり(加瀬台4号墳)。
シカ舎の前の冨士浅間神社。お社までの盛り上がりがすでに古墳(加瀬台5号墳)。
天照皇大神社。これもお社までの盛り上がりが古墳(加瀬台7号墳)。
こちらは公園の東端に位置する戦没者慰霊塔。
ともあれ動物園内部へ
それはともかく。
入口。実は新川崎から徒歩で訪れる場合は、こっちより了源寺のわきの階段を昇ってくるルートの方が若干近道だったりします。
入ってすぐにあるワタボウシパンシェの飼育舎。裏に入っちゃっててあんまりよく見えず……
シセンレッサーパンダはお昼寝中。レッサーパンダは寝てても動いててもどこの動物園でも人気です。
広々としたマーコールの放飼場。右の方には岩場がありますがほとんどのマーコールが左の方に集まって食事タイム中。
オスの角がコルク抜き上にくるくるっとなっているのが特徴です。
めっちゃ小さい仔だなと思ったんですが、検索してみるとどうも数日前に生まれたばかりの赤ちゃんみたい。まだ地球にあんまり慣れてないみたいで、ぴょこんぴょこん飛び跳ねるように歩いていました。
水回り担当、水禽エリア
のんびり目に泳ぐフンボルトペンギン。
チリ―フラミンゴ。右の池にはイシガメがいます。不思議な混合展示ではある。*3
餌がいいのか陽を浴びた羽の色が素敵です。
親亀の上に子亀が乗ってる!実際の血縁関係は不明ですが……。こちらはクサガメとアカミミガメという外来種2種が飼われている水槽。
ニシトビ。
水槽を掃除されているカミツキガメもいました。
よく考えると「水禽」全然いなかったなこのエリア。
もう一つの見もの、蹄のある生き物たち
ハートマンヤマシマウマがかなり近くで見えます。現在の日本人が近寄れるウマって、ポニーだったり、競走馬系だったりするわけですが、シマウマは彼らよりなんかこう厚みがあって存在感があるんですよね。横にいたカップルが
「えっ、シマウマ、なんかでデカくない……?」
「うん…なんか背は高くないけどデカい……」
という会話を交わしていたのが聞こえてきた時、心の中で「わかるわー」と絶賛同意していました。
放飼場の周りにはこんな注意書きも。
光さす放飼場で寝ているラマ。
起き上がって草を食べまくるラマ。
このエリアはもともとは川崎市が中国の瀋陽市を友好都市提携を結んだときに贈られたヘラジカとその子孫の放飼場だったのですが、2013年に最後の1頭が死んでしまってから代わりにラマの放飼場となった模様。
ヘラジカ、つぶらな瞳のわりに身体がとても大きくて、「シカ」というもののイメージを裏切ってくる素敵な生き物なためぜひまた動物園で姿を見たいのですが、生息域が口蹄疫や慢性消耗疾患の発生地であるため、家畜伝染病予防法上、生体の輸入は難しそうです。
2008年に夢見ヶ崎動物公園行った時に撮影していたヘラジカ。
そうそう、シカといえばお前たちくらいのサイズ感だよな……。
眠そうなヤギのタンゴさん。名札とかついてるけど特に常設のふれあいコーナーがあるとかではない。
小動物舎と小獣舎とあと鳥がめっちゃメンチ切ってくる
訪問したのが晩春から初夏の変わり目、ちょっと暑い日の午後だったため、省エネモードの動物が多く……
昼寝をしているアナグマ。
アライグマ(左上の毛玉)も寝てた。巣箱の入口が原産地にちなんで北アメリカ形になってるのクール。
暑くて水を飲むハクビシンとそれを邪魔するハクビシン。
平べったくなってωを冷やしてるっぽいアカリス
伸び切ったケープハイラックス。
望遠レンズで写真撮ってたらなんかインコとかオウムのみなさんにガンを飛ばされた……。
日本の国鳥、キジは日光の調子とも相まって非常美しい一枚が撮れました。
狭いながらも楽しい我が家、サル舎・レムール舎
昨今の動物園の様子から見ると少し手狭に見えるサル舎のゲージたち。3種の新世界ザルが飼育・展示されています。
ぴっちりとケージに張り付いて愛想を振りまく若干ムッチリとしたフサオマキザルさん。
宝くじ協会からの援助で建てられた少し現代的な「レムール舎」も植生はすっかり日本の藪という感じでしたが……
なんかヘブン状態なブラウンキツネザルもいるからこれはこれでいいのかな。
まとめ
開園して約45年、少しづつ改修されているなりにしかし結構古びているのは事実で、人口が下回ってる千葉市動物公園はおろか、下手すると市川市動植物園にも派手さで負けてるぞ!どうする川崎市!!みたいな感じがするところもあります。しかし、海外の生き物を色々取り揃えて行くとめちゃめちゃコストがかかる上、横浜市が3つも持っている動物園とが真っ向勝負になるし、といって「川崎の生き物」を取り扱っていこうにも「川崎の生き物…とは……?」となりかねないところがあるのも理解できます*4。動物が見れる大きめの公園として地域住民の方々に愛されてるっぽいので*5、うまい感じに愛され続けていってほしいなあと思った次第です。