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おじさんが、水族館や動物園に行ったり、そのへんでお酒を飲むブログです

2016年夏、台風の影に怯えつつ青ヶ島に行ってきたの記(その2)~青ヶ島上陸-一晩目まで

台風5号の隙を突いて、ここ数年、たびたびネット(あるいははてなブックマーク)で話題になる「青ヶ島」に行ってきた旅行記その2です
hms-ulysses.hatenablog.com
の続きとなっております。
↑にて青ヶ島三宝港に到着後、迎えに来ていただいた宿のご主人の軽ワゴンで宿泊先に向かいます。カメラバック胸に抱えて緊張していた*1ので道中写真撮ってないのですが、三宝港から外輪山を貫いて内カルデラに至る青宝トンネルの狭さ、内カルデラに茂る亜熱帯の植物の雰囲気、そして集落に出るために再び外輪山を貫く平成流し坂トンネル前後の胸を衝くような坂など、そのエキゾチックな情緒に圧倒されていました。
なお、青ヶ島を「インターネットの通じない秘島」みたいに書いているサイトを見かけたんですが、NTT DocomoだとLTEこそ通じていないものの、島の各所で3Gは問題なく通信ができていたことを書き添えておきます。
僕が今回お世話になったのは「民宿杉の沢」さん。居酒屋も営業されている宿で、居酒屋の方に通されて「昼ごはんいります?」って聞かれました。八丈島ではギリギリの乗り継ぎで何掛かっている余裕もなかった僕としては渡りに船、「お願いします!!」と元気よく答えて冷やし中華とおにぎりのお昼ごはんを頂きました。
「部屋は『新館』の方だからねー」と鍵を渡されて徒歩で数分(車だと数十秒)の建物に連れて行ってもらい、割り当てられた部屋に着くと、そこには清潔で気持ちのいい布団の用意があって、しっかりと冷房も効いており……



完全に、ごろごろしながらスマホでインターネットをやるという、自宅でのけだるい土曜の午後と同じのんびりさに身を委ねてしまいそうになりました。気力を奮い立たせて、お昼ごはんの時いただいた手描きの地図を元に
と、まずは島内随一の眺望という尾山展望公園をめざして部屋を出ます。
部屋を出てすぐに気がついたんですが、青ヶ島、上り坂全体がすべて急で、すぐに汗だく、息も切れてしまいます。これ、単純に僕のウエイトが重いからだけじゃなくて確実に地形の制約が道に反映されています。
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集落にほど近いところの携帯の基地局と、さらに山の上に見える別の携帯の基地局。山の斜面を覆う人工的な緑は、雨水を利用するために雨が地面に染み込まないようにする撥水性の塗装です。
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「簡易水道取水場」の銘板と、年金の還元施設であることを示す看板。舗装された斜面と、1万トンの水を貯める貯水槽とその付帯施設を合わせて向沢浄水場を構成している模様です。ちなみに、後に聞いたところによると、この浄水場が完成する前は5000トンの貯水槽を擁する水道施設があったそうなのですが、たびたび水不足に陥ったとのこと。
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そしてまた細い舗装路の急坂をえっちらおっちらと登ること、総計で20分ぐらいだったかな、きれいに整備された尾根筋の尾山展望公園にたどり着くと
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ほら!!島と海、もうただただそれだけの世界!!
もうねこれだけでね、この島来たかいがあったなーってすごい気分良くなってしまって、いい風も吹いていたので何をするでもなく、ぐるぐると身体を回しながらこの光景を見ておりました。
と、そこに、僕の視界をちょろちょろする謎の影が?
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???
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イタチだ―!!!!
こんな火山島に元からいた生き物とも思えず、後で聞いてみると、ある時期ネズミ駆除を目的として移入された個体群がそのまま居着いてしまったとのこと。固有の生態系に高い圧加えてないといいのだけれども……。
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あと、展望公園でのんびりしていたら、警視庁航空隊のヘリが島を2巡くらいして北の方に帰っていくのが見えました。駐在所スタッフだけじゃなくて、ヘリでパトロールとなると、まあ確かにこの島管轄できるの警視庁くらいだよなーと警視庁の規模に関する驚嘆を新たにしたりした。
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展望公園からは尾根線にそってこのように道が伸びていたので、この先にあるはずの島の最高地点である「大凸部(おおとんぶ)」に抜けていけないかなーと思って行ってみたんですが東台所神社までで行き止まり。
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途中の道から展望公園を振り返ってパチリ。
結構な時間をこれらの眺望を独り占め*2すると、集落に向かって降りていくことにしました。
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途中にあった「還住」像。「還住」とは、青ヶ島の内カルデラが江戸時代の天明5年(1785年)に火山活動を活発化させ、島民が八丈島への避難を余儀なくされた後、文政7年(1824年)に帰還して島を復興させた一連の史実を指します。島にとっては祖先の苦難の記憶で、「あおがしま丸」の先代の船が「還住丸」と名付けられているなど、深い意味合いを持つ出来事です。
詳細は
還住 - Wikipedia
など参考にしてください。
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青ヶ島小中学校。真ん中の太平洋にまっすぐ向いた渡り廊下が印象的で、青ヶ島を旅した人のブログでは必ずと言っていいほど言及されるポイントですね。青ヶ島小中学校は全校生徒20人程度のところ、中学校が他の学校と同じように教科別に担当教師がつくため、総計で20人強(+教頭+校長)という非常に手厚い態勢になっているそうです。ただ、地元出身の先生はいなくて、みなさん都内の別の学区から赴任されているということ、先生の態勢が手厚いから成績が良いかというと必ずしもそうではないこと、またここの中学を出るとさらに先の進学や就職を考えて(隣の八丈島の高校ではなく)、東京本土の高校に進学すること生徒が多いことなどを、のちのち地元の方とお酒を飲みながら教えていただきました。
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学校の海側すぐにあった佐々木卯之助の碑。↓こんなやり取りがあったのできょろきょろ探していました。

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工事現場で見かけた地層。火山活動のせいで褶曲している、という理解でいいのかな、これ。
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さらに集落を降りて行く途中で見かけた貯水槽。今でも使われているのか、向沢浄水場ができてからは使われていないのか、そのへんは不明です。また五洋建設の大きな出張所もあり、あ、マリコンが活躍する立地!と納得することしきり。そうこうしてるうちにたどり着いたのが
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「ジョウマン」と呼ばれる島の北端の草原地。
本当に完璧な、まるで夏そのものいった風情。写真で見ると海までほど近いように見えるんですが、目に入る端でもこれで実は海抜200mくらいあって、海と隔絶された島だなーというのがわかります。かつてはウシの放牧場として広く利用されていたそうですが、近年はウシの数もすっかり減ってしまったようで、草原というよりはササが卓越した笹薮となっています。

ちなみに、このジョウマンと集落を結ぶ道というのも急坂続きで、ホント足の裏と腰に来ました。

島の高所と低所を制覇して満足感とともにふらふらと宿の近くまで帰ってきた僕に声をかける人があり、「!?」と思って振り返ったると、「あおがしま丸」で一緒に上陸したご夫婦でした。なんでもこの日からしばらく「あおがしま丸」が寄港できない状況になりそうなため、「牛祭り」*3に合わせて就航するヘリのチャーター便の戻りに便乗できるようになっていると役場が広報しているとのこと。大変な感謝の気持ちとともに教えていただいた役場の番号に電話し2日後午後のヘリの席を予約します。「あおがしま丸」に比べると8000円くらい高いんですけれども、あてどなく閉じ込められること考えると安いものです。ほんと、とりあえず島まで来てみるとどうにかなるもんだなあ。

宿に返ってシャワーを浴び*4
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アオゼやカンパチの刺し身に舌鼓を打ちつつパッションフルーツサワーと青酎をいただいていたら、たちまちのうちに上機嫌になり軽く夜の散歩を済ませて布団にくるまると島一日目の夜は更けていきました……。

hms-ulysses.hatenablog.com
に続きます。

*1:カメラ持って旅する人間として何だこのザマという感じではあります……

*2:夏の暑さの盛りのせいか誰も登って来なかったですね

*3:8/11に開催される島最大の祭り。島外在住の島出身者も多く帰島する

*4:シャワーも、宿の飲み水もそうなんですが、雨水からゴミをのぞいて塩素を添加した水だからか、島の水道をひねって出てくる水はどれも非常に当たりが柔らかかったです