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東京みなと祭で公開されていた消防艇「みやこどり」と掃海艦「つしま」

東京みなと祭というイベントで「珍しい船の公開」があるのですが、今回は16日の日曜日に一般公開された東京消防庁の消防艇「みやこどり」と海上自衛隊掃海艦「つしま」を見学しました。

日本最大級の能力を持った消防艇、東京消防庁の「みやこどり」

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「みやこどり」の放水の姿などはこちらを。

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岸壁直接ではなく間に平台船(ポンツーン)入れてるのは岸壁と船の間の傾斜をなるべく小さくしようとしてるから、なのかな。後掲の「つしま」だとラッタルの角度結構ついてますね。なおいっぺんにあまり多くの人が入らないようにしているため、待機列の進み具合は割合ゆっくりでした。

その余興にってことでもないんでしょうけど、岸壁に近づいて伸縮放水塔を伸ばした状態を見せてくれる「すみだ」

放水塔が縮んだ状態だとこう

乗り込んですぐのところに予備っぽい錨が置いてあった。
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船首から船橋を見上げる。広角レンズで歪んでるのもあるけれど、放水砲、立派ですね。同行の友人が「みやこどり」を見て「軍艦らしさがある」って言ってたのもうなずける。
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船首側。ここにも放水口があります。
ぐるっと海側に回って
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上甲板救護室へ。傷病者手当用ベッドが並んでいます。左手に階段があってこの下にも救護室が。後ろの棚に「熱傷バッグ」など処置に必要なセットが格納されています。「分娩バック」があったの消防機関らしい。この部屋は背中側が
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この通路になっていて、外部(一番奥が外の甲板です)とのアクセスがスムーズになっています。この通路のところ個人用ロッカーや空気ボンベのラックの他に左右にトイレ・洗濯室・シャワー室があるのですがこれらが男女別になっているの、大規模災害での長期活動に備えているのかなと思いました。
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2階部分(01甲板)の大部分を占める指揮作戦室。海上保安庁の巡視船のOICみたいなものかな。立派な、どちらかと言うと会議室といった趣きの部屋。船舶火災なんかだと「みやこどり」自体前線に出なきゃいけないのでこの部屋使ってる余裕なさそうですが、大規模災害での救助・救護の局面だとこういう部屋必要なんでしょうね。以前見学した時は、正面のモニターに船のセンサーによるサーモグラフィーを転送できるというデモをやっていました。
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操舵室。船に関する全ての制御がここで行えるようになっています。手前がエンジン関係の制御盤。奥右側が船の操縦と周辺状況確認に関する機器類で、奥左側が消防関係の装備の制御盤です。放水砲を操作するジョイスティックが見えますね。
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船橋後部の階段を降りて上甲板後部へ。真ん中のシートに包まれたものは搭載艇。左右の折りたたまれた赤い機械は搭載艇揚収用のクレーンです。搭載艇奥に黒く口を開けているのが上の写真の通路の入口です。
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最後部はヘリコプターの救助スペースになっています。着陸はできなくて、降下・吊り上げ用のロープを下ろすところです。
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出口用のタラップがかけられているところにシャワーが設置されていました。「シャワー室」自体は船内に設置されているので水から上がったダイバーが汚れを落とすところかな。
「みやこどり」、強力な新鋭艇で東京消防庁が自慢に思うのも分かるよなあと思いました。願わくばこの船が大活躍なんていう事態が起こらないことを……。

主要目 みやこどり(4代目)
総トン数 195.00t
全長 43.2m
全幅 7.50m
巡航速力 約20ノット(38km/h)
放水能力 70,000リットル/分
就役 2013年3月

もうすぐお別れ。日本最大の木造船、掃海艦「つしま」

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「みやこどり」を後にして、次は海上自衛隊掃海艦「つしま」の見学に。
軍艦好きな方には要らぬ講釈ですが、掃海艦というのは海の中に仕掛けられた「機雷」を除去するための艦です。機雷は直接的な接触の他、船が発する様々なサイン、スクリュー音や水圧の変化、鉄製の船体が移動することで生じる地磁気の乱れなどを検知して爆発し艦船に損害を与えます。この機雷を物理的に浮かび上がらせたり、偽のスクリュー音や地磁気の変化を発生させて周りに艦船が居ない状況で爆発させ、無効化するのが「掃海」という作業になります。
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掃海のためには機雷が仕掛けられている海域に進入しなければならないため、当然、掃海艦艇が機雷を作動させてしまう危険性があります。その危険性を少しでも減らすため、ほとんどの掃海艦艇は雑音の発生を抑え、地磁気を乱さないために通常の鋼鉄を使わないように設計されています。「つしま」が木造なのはこのためです。また「つしま」が属する「やえやま型掃海艦」は掃海艦艇の中でも特に深い水深に設置された機雷を除去するためのもので、深い水深=そこまで届かせるに機材の大型化が必要、なのでそれを搭載する船も大きくなくてはならず、結果「やえやま型」が日本最大の木造船ということになったわけです。
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待機列でゆっくり進んでいると、ラッパ手の方がラッパ吹奏の実演をしてくれました。総員起こしから消灯ラッパまで一日の節目に吹かれるラッパを一通り吹奏すると
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さあっ、とこの日「つしま」の1日艦長を務めていた杜野まこさんにラッパを渡し、吹いてみてくださいと。周辺みんな「いきなりは難しいよな~」という目で見ていたのですが
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見事音を出せて得意顔の杜野さん。以前も別の艦で1日艦長をやられた時にラッパにトライする機会があったみたいですね。*1あとまったくノーチェックだったのですが、杜野さん、アイマスのアイドル姫川友紀の声やってらっしゃるんですね、知らなかった……。
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こちらは本来の、増澤寛治艦長によるラッパ吹鳴。何十年か昔、ラッパ手をやっていたことがあるとかでサマになっておりました。この後その辺のちびっこたちにラッパが回ってラッパチャレンジのひとときに。
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遠目にはあまりわからないのですが、近寄って見ると確かに木造船。
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こちら木造船の建造工程を説明したパネル。こんなに手間がかかるうえ、木造船は使ってるうちに船体が水吸って重くなり、速力が出なくなる、そもそも木材と職人の確保が困難、などといった難点もあり、最近の海上自衛隊掃海艦艇はFRPで作られるようになりました*2FRP製だと雑音が出やすいという問題があったのだけれどそれも技術の進歩でどうにかしたみたい。
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訓練用機雷。"「グラウンドターゲット」略して「グラタン」、美味しそうな名前ですが食べられません"というネタ、他の機雷戦艦艇でも見たことがあるので掃海隊群*3の持ちネタなのかも。
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後甲板には機雷除去用の装備が所狭しと並べられています。これをうまく必要な機材だけ海に下ろしてまた上げるというの考えるだけで、もう大変な作業だなという気持ちに。
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吊るされている黄色い機材は機雷処分具S-7(2型)。いわば水中ロボットで、探知した機雷に爆薬を設置して爆破させる「機雷掃討」のためのものです*4。先端の黒い丸たちがセンサーその他で、お腹に抱いているのが掃討用の爆薬ですね。
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艦橋。ここは船の操縦のためだけの部屋で、掃海・掃討の指揮はCIC(戦闘指揮所)で行われます。海上自衛隊だと基本的に非公開ですね。米海軍だと一般公開の見学ルートに入っていることもあります。
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艦橋から降りて
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艦首へ。正面には唯一の備砲である20mm機銃。自衛用兼浮いてきた機雷を爆発させるための装備です。船のサイズの割には軽武装に見えますが、掃海艦艇の「武器」は機雷除去のための機材だということが逆によくわかります。

写真で見ても手入れが行き届いていることがわかりますが、就役から20年を超え、現在代替艇の建造が進んでいまして、「つしま」は同型艦の「やえやま」とともに、この7月に退役することになっています。退役する前に希少になりつつある木造掃海艦艇を見ることができたのは本当に良かったです。

*1:掃海艦 つしま|杜野まこ オフィシャルブログ「真実のくち MAKOのくち」Powered by Ameba

*2:外国だとFRPか非磁性鋼が多い

*3:「つしま」が所属している部隊の、さらに上級部隊

*4:上記の機雷を作動させて無力化するのは「機雷掃海」と言われます